免許取消・失効による再取得
せっかく取った運転免許ですが、事故や違反によって取り消しとなってしまう方がいます。
また一方で、運転免許証の有効期限を気にせず、あるいは不測の事態によって運転免許の期限および更新タイミングを逃してしまい、失効する方もおられます。しかし、まあ失効しても仕方ないという方はあまりいないでしょう。ほとんどの方は、再度更新をしたいと思うはずです。
ここでは、普通自動車の免許を取り消しになった方や失効した場合、その再取得をするための方法についてご紹介します。
1.免許取り消しの場合
①欠格期間の終了
「欠格期間」とは、再度運転免許を取得することが出来ない期間を言いますが、その長さは、取り消された際の点数によって決まっています。「運転免許取消処分書」か、それに類した通知書をもらっているはずですから、そこに記載されている期間を確認します。
②教習所への入校
欠格期間が終了する前に運転免許を取得することはできませんが、自動車学校へは入校することができます。
ただし注意すべきことは、教習所によって「取消し処分者講習を受講した後でないと入校不可」、「欠格期間が終了する直前まで入校不可」、「欠格期間終了の1ヶ月~2ヶ月前までは入校不可」「取消し処分経験者は入校不可」などと、学校によって指定事項が違っていますので、事前に各学校へ問い合わせしておくのがいいでしょう。
入校できたら、最短期間で運転免許を再取得する方法を考えてみましょう。それは欠格期間終了の日に合わせて卒業し、翌日試験場にて本免許を取得するという方法です。
③仮運転免許の取得
入校したら次にすべきことは、仮運転免許の取得ということになります。なお仮運転免許を取得できるのは、「指定自動車教習所」に限られますので、ここにも注意する必要があります。「認定自動車学校」という看板を掲げているところですね。なお仮免許は、運転免許試験場でも取得することができます。
仮免許には、技能検定と学科試験がありますので、その双方に合格しないとなりません。技能は安全確認をしっかり、また学科は忘れていることがありますから、夜、自宅で教本を読んで復習しましょう。
ここで注意すべきことは、仮運転免許は取得できても、その有効期限は6ヵ月であるということです。
再取得するためには、①で書いたように、欠格期間終了がいつであるかに十分注意する必要があります。仮免許を取得しても、欠格期間終了までまだ6ヶ月以上あった、ということがないようにしましょう。
また、免許が取り消しになったとしても、既に社会人となり仕事をお持ちである方がほとんどですから、仮免許を取るための教習所の予約や通学は、時間的にも肉体的にも相当大変であることは容易に想像されるところです。
④取消処分者講習の受講
仮免許取得のめどもついた、欠格期間終了までに仮免許が失効することもない。それらを確認したら、今度は本免許試験受験前に、取消処分者講習を受講しておく必要があります。
これは都道府県によっても違いますが、おおむね2日程度、次の内容で講習が行われます。
運転適性検査
講習の目的等の説明(自覚と自制)
シートベルトのビデオ上映
危険の予知
カウンセリング(個別面接)
実際に運転しての技能診断
模擬運転装置の操作
飲酒のビデオ上映
交通事故のビデオ上映
内容は当然のごとく、安全運転の基礎や法令遵守が主なものとなりますが、受講態度には真摯なものが求められます。まあ当然といえば当然ですね。取り消しとなるには、過去に違反を積み重ねたとか、重大な違反をしてきたという明確な理由があるわけですから、それら過去を心から反省し、1から出直すという反省の心が大切なことは言うまでもありません。
⑤本免許試験まで
仮免許を取ったら、本免許技能試験に合格しなければなりません。自動車学校なら、卒業検定に合格しておけば、技能試験は免除されます。ただし有効なのは、卒業検定合格から1年間です。
試験場に行って一発試験を受ける方法もありますが、免許取り消しされた方は厳しい目で見られますから、時間をかけてでも自動車学校で卒業検定まで取ったほうが確実です。
そして、欠格期間終了後すぐ、免許試験場で本免学科試験に合格すれば、晴れて運転免許を取得できます。
⑥今後のために
文章にすると簡単ですが、ここまでたどり着くのはかなりの難関であることは間違いありません。それは、仕事をする一方で学校に通うという、時間的・肉体的制約の中でしなければならないこと、仕事そのものへの影響、上司・職場の仲間・家族の理解、金銭的事情など、が考えられるからです。免許を取り消しになったその理由そのもの(事故など)の民事責任がまだ解決していない方も、中にはいるでしょう。それらを全て1つずつ解決しなければ、ここまで来ることはできません。それら負担を身に噛み締めて、今後の運転にあたらねばならないことを、真に受け止めることが大切です。
2.運転免許を失効してしまった場合
運転免許は、ゴールド、ブルー、グリーンの3色によって更新期間が分けられています。自分の更新期間がもっと長いと思っていたとか、うっかり忘れてしまったなどの理由により、免許証更新を忘れてしまい、失効してしまうことがあります。本来ならそこで免許は失効し、また最初から取得せねばなりませんが、いわば救済措置が用意されています。まずはそれについてご紹介します。
①「うっかり失効」と「理由ある失効」
免許証の更新には主に2つのパターンがあり、1つは「うっかり失効」。つまり忘れてしまったものです。
2つめは、次の4つの条件のどれかに該当したときです。
ⅰ. 海外旅行や災害のために更新手続ができなかったとき
ⅱ. 病気あるいは負傷によって更新手続ができなかった
ⅲ. 法令によって身体の自由が束縛されていた
ⅳ. 社会慣習上、あるいは業務の遂行上、避けられない用があって更新手続きができなかった
これらを「理由のある失効」としましょう 。
これらいずれかの場合、免許証の効力がなくなってしまう=無免許となって本来は1から再取得せねばなりませんが、正規の手続きを取れば免許試験の一部が免除されて再取得することができます。
そのためにはまず、特定失効者(失効6か月以内のうっかり失効、または失効6か月を超え3年以内の理由がある失効)講習を受講せねばなりません。失効した理由や期間、過去の違反歴等によって区分が異なります。受講日も都道府県によってまちまちですから、まずは講習の日程を所轄の警察署に問い合わせてみましょう。これにも期限がありますから、失効しても、いつまでもこの手続きで済むというわけではありませんので注意が必要です。
②うっかり失効
免許の失効後6ヶ月以内に運転免許試験を受験し、失効前の免許を受け直す場合には、学科試験と技能試験が免除されます。つまり、免許を失効して6ヶ月以内なら、適性試験(色彩識別能力試験を除く)に合格することで、失効前の免許を再受験することができます。
たとえうっかりでも、ひとたび失効してしまったら、言い訳はききません。では、失効を防ぐには、どうすればいいでしょうか。
原始的な方法では、免許証の有効期限を常に注意する、カレンダーに書いておく、目に付きやすい貼り紙を家の中に貼っておくなどの方法があります。が、今やIT社会です。パソコンやスマホのスケジュール機能を使って、更新日の2ヶ月ぐらい前からアラームやアラートをセットしておき、さらに1ヶ月前になったら、毎日アラームなどが鳴るようにしておくという方法も考えられます。
③理由ある失効
失効後3年以内で、「やむを得ない理由」がなくなってから1ヶ月以内であれば、学科試験と技能試験が免除され、適正試験(色彩識別能力試験を除く)に合格することで、失効前の免許を受け直すことができます。ただしこの場合は、やむを得ない理由を証明する書類が必要です。
④そのいずれでもない場合
「理由ある失効」の4つの条件に該当せず、免許を失効して6ヶ月を超えた場合には、残念ながら最初から免許を受け直すしかありません。
ただし、失効した免許が普通自動車・中型自動車・大型自動車を運転することができる免許(普通第一種免許・中型第一種免許・大型第一種免許・普通第二種免許・中型第二種免許・大型第二種免許)の場合には、失効後6ヶ月を超え1年以内であれば、失効した免許の区分に応じた仮免許(普通仮免許・中型仮免許・大型仮免許)試験の学科(知識)試験と技能試験が免除されます。
つまり、適正試験(色彩識別能力試験を除く)に合格すれば、失効した免許の種類に応じた仮免許を取得することができるというわけです。
⑤失効後3年を越えた場合
失効後6ヶ月の期間内に運転免許試験を受けられなかったやむを得ない理由(理由ある失効)があり、その理由が改正道路交通法公布日(平成13年6月20日)前に発生した場合で、やむを得ない事情がなくなってから1ヶ月以内であれば、失効後3年を超えていても、適正試験(色彩識別能力試験を除く)と学科試験に合格すれば失効前の免許を受け直すことができます。この場合には、技能試験だけが免除されます。
やむを得ない理由として認められるのは、「3.理由ある失効」の場合と同じです。これは、H14年6月1からに施行された改正道路交通法による経過措置です。
⑥70才以上の方の場合
免許を再取得する場合、高齢の方にはまた別な講習が義務づけられています。それは、70才未満の人は『特定失効者に対する講習』を、70才以上75才未満の人は『高齢者講習』を、75才以上の人は『講習予備検査(認知機能検査)』と『高齢者講習』をそれぞれ受けなければならないというものです。
その、75才以上の人に対して行われる講習予備検査(認知機能検査)は、受講した結果によって、次の3分類のうちのいずれかに受講者を分類します。
第1分類:記憶力・判断力が低くなっている人(第1分類)
第2分類:記憶力・判断力が少し低くなっている人
第3分類:記憶力・判断力に心配のない人
第2分類と第3分類の人は特に問題はありませんが、第1分類の『記憶力・判断力が低くなっている人』に分類された人は、申請の日から過去1年の間に認知機能が低下した場合にありえる違反行為をしていた場合、(専門医の診断を受けたり、免許を取得することができない、あるいは免許証の交付が一定期間保留されることがあります。
人間、誰しも齢は取りたくありません。また齢をとって高齢になって「俺はまだ大丈夫」と思っていても、周りから見るととても危なっかしいことがあります。そんなときは思い切って免許を返上できればいいのですが、なかなかそうはいかないものです。そんなときは、家族や子供が中心となって、その後の生活を考えるほかありません。
⑦おわりに
以上、免許を取り消しになった場合および失効した場合の再取得について記述しました。
が、失効して再取得するときの免除要件に該当しなかった場合ですら、1から学科と実技を受験しなければなりません。それには相当な時間と、精神的肉体的な苦労が伴います。わけても大変なのは、二輪車の実技です。二輪車は体で操作するものですから、それが「ペーパーライダー」であれば、免許を取り戻す苦労は並大抵ではありません。IT社会の道具を使って、免許を失効させないように予防しておくのがよさそうです。
また、取り消しになった場合の苦労は、その上をいくものであることも容易に想像できます。
道路交通法を守って安全運転に徹することはもちろんですが、免許を失効させないこともまた、運転技術の一つであると言えるでしょう。
あなたの免許が取り消されたり、失効しないことを願ってやみません。